AGA(男性型薄毛症)

毛の形 脱毛症について・・4

目安時間 14分

1.毛幹の形態

1 )毛髪断面の形
毛髪断面の形は、正円形ではなくやや扁平な形をしています。これは人により、人種に
よって、かなりの違いがあります。
2 )直毛とくせ毛
毛の形状を大きく分けると直毛、波状毛、ちぢれ毛の 3 種類があります。
直毛の毛は毛包の形が垂直に近く、まっすぐ伸び断面は円形か円形に近い形となってい
ます。
波状は毛包が弧状になっています。毛球部の曲がり方が強いほどくせが強くなります。
円形脱毛症が治った時、直毛が部分的にくせ毛になることがあります。これは真皮の結合
組織も障害を受けて毛球部が少し曲がることによると考えられます。
波状毛の毛は毛包の形が曲がり弧状に近い形に伸び、断面は隋円形になり、ちぢれ毛の
毛は毛包が弧状の形で伸び、扁平のいびつな形をしています。
3 )くせ毛は水分を含むと直る
くせ毛でパサついている毛は、水分を含むとくせ毛が直ります。これはコルテックス(毛
皮質)にあるコルテックス細胞に原因があると考えられます。
毛髪に水分を与えると、コルテックス細胞は疎水性のフィブリルと親水性のマトリック
スが集まってできていますが水はマトリックス部分に集まり膨らむことになります。コル
テックス(毛皮質)にあるフィブリルとマトリックスが均等に含まれている場合は、水分
を含んでも均一に膨らみます。また、反対にコルテックス(毛皮質)にある水分が減少し
ても均一な収縮となります。
コルテックス(毛皮質)にあるコルテックス細胞の構造に偏りがある場合は、水分を吸
う部分に偏りができ、コルテックス細胞内の水分の減少によっていびつな収縮が起こりく
せが生じます。
4 )髪質の遺伝
遺伝の形質は親から子へと受け継がれますが、かならずしも同じように現れるとは限り
ません。

2.毛髪のタイプ

1 )毛髪タイプ
毛髪のタイプは大まかに 3 種類に分けられます。
① 直毛:剛状毛、滑状毛、扁平波状毛
② 波状毛:大波状毛(浅広波状毛)、小波状毛(深狭波状毛)、湾曲毛
③ ちぢれ毛:ちぢれ毛(捲状毛)、湾捲状毛、密捲状毛、過状毛、螺状毛
2 )人種による違い
人種により、白色人種に多い穏やかな弧状、黄色人種に多い直毛、黒色人種に多いスプ
リング状のちぢれ毛(球状毛)があります。
毛径指数
黒色人種  0.50~0.60
白色人種  0.62~0.72
黄色人種  0.75~0.85

3.くせ毛の程度

毛髪の断面の形状を数値で表わしたのが毛径指数(トロッター係数)で毛径の測定値を
使って計算することができます。毛径指数は 1 に近いほど直毛になります。
毛径指数= 毛髪の短径/長径
で示します。

4.毛幹の白く観察される異常

1 )結節性裂毛
肉眼では白く観察され、ほうきの先を合わせたように見え、引張るとこの部分から切れ
ます。
2 )ヘアキャスト
肉眼では白く観察され、内毛根鞘の一部が毛を取り囲み付着したものです。毛を引張る
と内毛根鞘が切れて、これを触ると上下に移動します。
3 )スプレーカス
肉眼では白く観察され、毛に皮膜形成剤が残り、形が色々あり固定しています。
4 )アタマジラミ
毛髪に寄生し成虫の雄は長さ 1.0~1.5 mm、雌は 1.8~2.0 mm、腹部は 8 節からなり暗灰
色です。卵は約 0.5×0.3 mm で隋円形、黄白色で 1 回の産卵数は約 40 個、孵化は 5~16
日、孵化の温度は 30~34℃。駆除には殺虫剤のスミスリン L シャンプータイプがありま
す。

5.白髪

1 )白髪はどこから生え始める
毛母細胞にある色素細胞(メラノサイト)がメラニン生成を減少していき白髪になりま
す。毛母細胞にある色素細胞(メラノサイト)の生成が減少する白髪、遺伝による若白髪、
病気などによる白髪があります。
白髪の原因として以下の 3 つが挙げられます。
① 毛球部にある色素細胞(メラノサイト)の機能低下によってメラニンを作る量が減
る。
② メラニンを作るチロシナーゼという酵素の働きが弱くなりメラニンを作る量が少な
い。
③ 色素細胞(メラノサイト)で作られたメラニンが毛母細胞に入り込まなくなり毛髪
にメラニンが含まれない。
白髪が銀白色に見えるのは髄質(メデュラ)の気泡にあたり乱反射するためといわれま
す。
2 )若白髪
白髪の発生は老化現象の表れと考えられていますが、一方で、若くして白髪が生えてい
る「若白髪」の人も見られます。
3 )歳をとるとなぜ白髪になるのか
毛髪を作っている毛球に色素細胞(メラノサイト)があり、ここで作られたメラニン色
素を毛母細胞に送り、コルテックス(毛皮質)内のメラニン色素の量や種類が毛髪の色を
決める要因の一つになります。
加齢により色素細胞の細胞分裂がだんだんと減少するとコルテックス(毛皮質)内のメ
ラニン色素が減少していき色のない「白髪」になります。
4 )老化による白髪と若白髪では何が違うか
理由としては発生年齢が挙げられます。日本人の場合の平均的な白髪の発生年齢は男性
34 歳、女性 35 歳頃といわれています。若白髪は小学生からみられます。
5 )白髪や薄毛は遺伝する
人は誰でも遺伝の形質を受け継ぎます。毛髪も同じで遺伝の形質は両親、祖父母からも
受け継ぎ、その現れ方も同じではありません。
6 )白髪を抜いても生えてくるのは白髪
白髪を抜いても、そのあとから生えてくるのは白髪です。白髪を抜いたら黒い毛が生え
るのであれば、染める必要がなくなります。
7 )毛髪の根元が黒く途中から白い場合は
毛髪は体の一部ですから、体調やホルモンなどによって色の変化が起こることがありま
す。
8 )白髪は黒い毛髪に戻せるか
白髪は元の黒い毛髪に戻すことはできません。ただし、色素細胞(メラノサイト)が何
かの刺激によって白髪から黒い毛髪に変化することがあります。

6.脱毛症

1 )円形脱毛症の病因
円形脱毛症の原因としてストレス学説、ホルモン学説、末梢神経異常説などがあり自己
免疫説が主流を占めてきています。
自己免疫説:円形脱毛症の場合は毛球にある毛母細胞が体内で異物と誤認され血液中の
リンパ球が攻撃し毛球の毛母細胞を破壊します。破壊された細胞は角化した毛幹だけが残
り成長期性脱毛症を起こします。自己免疫は体内の細胞同士の反応によって引き起こされ
るものです。
2 )脱毛症の分類
抜け毛の種類は休止期毛と萎縮毛に分けられます。
休止期毛(棍棒毛)はヘアサイクル(毛周期)による自然の抜け毛です。
別の抜け毛は萎縮毛になります。この毛が抜ける脱毛症を成長期性脱毛症といいます。
萎縮毛は成長期の毛根が破壊され細くなった毛が多く抜けます。

1 .成長期性(萎縮毛性)脱毛症
①円形脱毛症
2 .休止期性(棍棒毛性)脱毛症
①接触皮膚炎・慢性湿疹による脱毛
②脂漏性皮膚炎・フケに伴う脱毛
③男性型脱毛症
④分娩後脱毛症(産後脱毛症)、ピル使用後脱毛症
⑤その他
3 .全身状態(疾患)に伴う脱毛症
(1)栄養障害による脱毛―断食・飢餓療法、いわゆる「ダイエット」による脱毛―
(2)内分泌に伴う脱毛
①甲状腺機能亢進症
②甲状腺機能低下症
③その他
(3)膠原病に伴う脱毛症
①全身性エリテマトーデス(=全身性紅斑性狼瘡、SLE)
②慢性円板状エリテマトーデス(DLE)
③進行性強皮症、剣創状強皮症
④その他
4 .薬剤による脱毛症(薬剤性脱毛症)
①抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)
②副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)
③その他
5 .感染による脱毛症
①真菌症による脱毛
②細菌感染による脱毛
③梅毒性脱毛症
6 .機械的脱毛症(外傷性脱毛症)
①新生児脱毛症
②牽引性脱毛症
③圧迫性脱毛症
④トリコチロマニア(抜毛症)
7 .瘢痕性脱毛症
円形脱毛症は治りやすいタイプと難治性のタイプとがあります。
(1)単発型―脱毛斑が 1 つのみ
(2)多発型―孤立性の脱毛斑が数個ある
(3)多発融合型―多数の脱毛斑があってそれらが融合して不整形の地図状になる
(4)蛇行型―多発融合型のうち後頭から側頭にかけ毛髪の生え際も脱毛する
(5)全頭型―全頭が脱毛
(6)びまん型―びまん(広がりはびこること)性に脱毛し全頭が脱毛する
(7)汎発型―頭毛の他、眉毛、まつ毛、あごひげ、

3 )抜け毛の種類
自然に抜けた毛はヘアサイクルを終えた棍棒毛、円形脱毛症のような病的な萎縮毛と遺
伝による男性型脱毛症、女性型脱毛症などがあります。
4 )男性型脱毛症
男性ホルモンのテストステロンが毛乳頭細胞の細胞質に入ると 5α—リダクターゼ(還元
酵素)が働き強力な男性ホルモンである 5α—ジヒドロテストステロン(5α—DHT)となり
男性ホルモン受容体(アンドロゲンリセプター)に結合して細胞内の核に入り遺伝子の因
子が働き毛の生成に作用します。
とくに細胞のエネルギー源であるブドウ糖に作用しエネルギーとして役立つ ATP の物
質の合成を阻害します。そのためエネルギー源の ATP の産生が失われ毛のたんぱく質が
合成されなくなり毛母細胞は細胞分裂をやめ角化を始めやがて休止期毛になり休止期にな
ると 3 ヵ月で抜けるようになります。
また、グルコース—6—リン酸脱水素酵素(G6PDH)がエネルギー代謝とくにペントーズ
サイクルに関与し毛の育成に関与しています。
脱毛の進行が早い人ほど G6PDH の値が低く正常の毛髪に近い人ほど G6PDH の値が高
いという報告があります。
5α—リダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は毛の毛乳頭細胞にありⅡ型は男性ホル
モン作用を受け前頭~頭頂部の毛が軟毛化します。
5 )女性型脱毛症
女性は卵巣から女性ホルモンを分泌し副腎からも男性ホルモンを分泌しています。女性
ホルモンがほとんどを占め男性ホルモンの影響は受けませんが 40 歳前後から女性ホルモ
ンの分泌が減少し男性ホルモンとの比率に変化が起きます。この変化により頭頂部の毛が
細くなり毛の本数も減少しますが男性のような軟毛化はなく前頭部の生え際の毛もほとん
ど変化がありません。
6 )女性の薄毛・脱毛
女性の中には加齢によって前頭部が後退、毛髪全体が薄くなることがあります。女性型
脱毛症、びまん性脱毛、薄毛を調べると毛数が少ない、細い毛髪(軟毛)が増え伸びが遅
いことがあります。このような人には貧血気味、甲状腺機能異常がみられることがありま
す。
7 )抜け毛をみて脱毛症の種類が分かる
男性型脱毛症、分娩後の毛根像は棍棒毛の毛根で先端が丸く膨らみを持っています。
円形脱毛症は毛根の先端に丸い膨らみがなく先端が細くなっています。また切れ毛、断
毛がみられます。
8 )男性型脱毛症の年齢
男性型脱毛症の年齢は早ければ 20 歳後半で前頭~頭頂部の毛が硬毛から軟毛になりま
す。女性においても 30~40 歳台に薄毛になることもあります。
9 )多い脱毛症
多く見られるのは男性型脱毛症、女性型脱毛症、円形脱毛症です。男性型脱毛症の症状
は前頭部から頭頂部にかけて毛包が早く休止期に入り細く短い毛になり頭皮が見えるよう
になります。女性型脱毛症は男性の脱毛ほどではなく完全な脱毛は起こりません。
10)ストレスで脱毛症になる
現在は「自己免疫説」が主流、ストレスによる脱毛などは一つの要因になるかもしれま
せん。
11)抜け毛を見て将来薄くなるか分かるか
抜け毛だけでは判断できません。極端に細い短い毛が抜け、頭頂部、前頭部に集中し、
遺伝の要素がある場合は推察することも可能です。
12)抜け毛が増える原因
男性型脱毛症、女性型脱毛症、血液循環不良説などがあります。
13)毛根の形
成長期毛(anagen hair)と休止期毛(telogen hair)の 2 種類があります。この両者の
比率を毛根像(トリコグラム trichogram)といいます。
正常の成長期毛は抜けにくく、毛球部から切れて抜け、毛根部は太く、内毛根鞘が付着
しています。休止期毛は簡単に抜け棍棒毛です。
脱毛症の際には、多くは棍棒毛が抜けますが、円形脱毛症の際には、成長期性で毛根部
が細くなった萎縮毛(dystrophic anagen hair)が抜けます。萎縮毛はその形から漸減毛
(感嘆符毛)(exclamation(—mark)hair)ともいいます。
14)年齢による髪質の変化
人は誰でも年をとります。男女とも加齢により毛母細胞の細胞分裂の活動が衰え、毛髪
がだんだん細くなり、弾力性もなくなります。
男女とも 20 歳後半から毛髪が細くなり始め、とくに女性は 40 歳前後から女性ホルモン
が減少してきますから、脱毛症の家系の人は薄毛になりやすくなります。
15)加齢による薄毛
毛は毛球の毛母細胞の分裂によって作られた角化物で毛母細胞は水分と栄養分が必要で
血液から送られています。毛母細胞の下には毛乳頭があり、毛細血管も入り込み、また毛
包の周囲にも毛細血管が張りめぐらされています。
この毛細血管は加齢とともに次第に細くなり水分と栄養が減少し、毛母細胞の分裂の活
動が減少して太かった毛がだんだん細くなります。そして中には分け目が透けて見えるこ
とがあります。