毛髪の性状と障害・・3
1.毛幹の化学的性質
1 )側鎖結合(架橋)
① シスチン結合
シスチンは、硫黄(S)を含んだアミノ酸でケラチンを特徴づける重要なアミノ酸です。
このシスチンは、システインという硫黄(S)を含んだアミノ酸が 2 分子で側鎖残基の-SH
(メルカプト基)同士が酸化されて水素がとれ-S-S-の結合で結ばれます。この-S-
S-の結合をシスチン結合、あるいはジスルフィド結合(SS 結合)と呼んでいます。還元
剤の作用を受けると還元され、その後酸化剤を用いると酸化(再結合)させることもでき
ます。この化学的性質を応用したのがパーマネントウェーブです。
② 塩結合(イオン結合)
アミノ酸がペプチド結合になるとき酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸は、分子中に COOH
基(カルボキシル基)と NH2 基(アミノ基)が1個ずつ使われ COOH 基(カルボキシル
基)が 1 個、NH2 基(アミノ基)が 1 個余った部分として残ります。このような側鎖を
持ったポリペプチド主鎖が隣接すると互いの COOH 基(カルボキシル基)の陽イオン(+)
と NH2 基(アミノ基)の陰イオン(-)とがイオン的に働き結合して-COO⊖⊕H3N-と
いう塩を作ります。この結合を塩結合(イオン結合)と呼び pH4.5~5.5 の範囲(等電点)
のときに最も強い結合力になりケラチン(毛たんぱく質)は安定した状態となります。pH
が等電点より酸性側又はアルカリ性に傾くほど、結合は弱くなります。
③ ペプチド結合
ペプチド結合は非常に強固な結合で存在する数は少数になります。たんぱく質を分解す
るほど強い酸化剤を使わなければ切断できません。
④ 水素結合
水素結合は主鎖の中の酸素と水素の間の引張り合う力で結合しています。結合力は弱
く、水でも容易に結合が切断されますが乾燥によって再結合します。
側鎖結合の中で他の結合より数が多く毛の強度や弾性に影響しています(毛髪の強度に
約 35%影響)。
2 )毛髪の等電点
側鎖の塩結合が最も安定している等電点は pH4.5~5.5 の範囲で、この領域を離れると結
合が弱くなります。
毛髪を構成しているアミノ酸は電気的に陽イオン(+)と陰イオン(-)の両方の性質
を持ち、中性であれば陽イオン(+)と陰イオン(-)がつり合った状態になり安定した
結合になります。これを等電点といいます。
3 )毛と酸とアルカリ
毛は化学的な刺激、酸に対してはかなり強い抵抗力があります。
キューティクルは酸に対してひきしまる性質(収れん作用)があるためキューティクル
が閉じ毛の内部に酸が侵入するのを防ぎます。
毛は、アルカリが大きくなるほどたんぱく質の塩結合が切断されます。
2.毛幹の物理的性質
1 )毛髪の強さ
1 本の毛の両端を持って引張るとある程度以上になると切れてしまいます。太さ 0.08
mm の健康な毛を引張ると 150 g 前後の力で切れます。ただし、毛によっては 120 g 以下
で切れる弱い毛もあり、原因として化学的損傷、栄養不足、生まれつき毛が弱いなどいろ
いろ考えられます。逆に 200 g 以上超す力に耐える強い毛もあります。
2 )毛髪の弾性
毛を引張って離すと、正常な毛は約 5%伸びても元の長さに戻ります。これを弾性とい
います。5%以上引張るとフィブリルの分子構造が壊れ始め、一般的には 45%以上伸ばす
と切れてしまいます。
3 )毛髪を抜くのに要する力
毛根にある毛幹のキューティクルと内毛根鞘の鞘小皮が同じうろこ状で接し互いに噛み
合って毛が抜けるのを防いでいます。また、毛乳頭は毛球に包みこまれているため同じよ
うに毛が抜けにくくなっています。
成長期の毛は抜けにくく、健康な毛を抜くのに約 50 g の力が必要になります。10 万本
全部抜くには約 5~8 t の力が必要になります。
4 )毛髪の吸水、吸湿性
毛は通常約 12%の水分が含まれています。毛は外気にさらされているため外の影響を受
けやすく、ダメージを受けた毛髪は健康毛に比較すると湿度の高い季節には水分を吸収し
てべたついた状態になります。
また、乾燥した季節では毛髪の水分量が流失しやすくなるため毛髪がパサついた状態に
なります。
5 )毛髪の膨潤
毛は水分を吸収すると膨潤し長さは1~2%ほど長くなり、また太さは15%ほど太くなり
重さは 30%ほど増えます。
これはコルテックスにあるフィブリル(毛線維)が互いに結合して網目状となり、その
中に吸収された水が入り込み押し広げます。フィブリル(毛繊維)の他に水に切れない側
鎖結合があり縮もうとします。水による膨らむ力と側鎖結合の縮む力とが一定状態になる
とそれ以上は吸収しなくなります。これを膨潤平衡といいます。損傷毛は、側鎖結合が減
少しており、その分だけ横に広がって吸収量も増えます。
6 )毛髪の帯電性
毛髪はブラッシングやコーミングの摩擦によって静電気が発生し、毛髪同士が反発した
り毛髪がまつわりついたりします。これは摩擦によって、毛髪は+(プラス)に、ブラシ
は-(マイナス)に帯電し、毛髪同士は反発し合い、毛髪とブラシとが引き合うためです。
3.毛髪の損傷
毛髪には自己修復機能がないためダメージ(損傷)を受けると再生することができませ
ん。しかし他の器官と違い生え変わるヘアサイクル(毛周期)があります。
毛髪の傷む原因
(1)生活スタイル
① 紫外線によるダメージ(損傷)
毛髪は紫外線を長時間浴びるとその影響によりキューティクルが変性します。こ
のことによりキューティクルが剝がれたり、柔軟性やツヤがなくなり内部の損傷へ
とつながり切れ毛や枝毛になることがあります。紫外線対策としてのヘアケア製品
があります。
② シャンプー時の毛髪の摩擦
③ ドライヤーによる乾燥
毛髪は熱によって変性しますが乾熱と湿熱があります。
乾熱では 80~100℃によって強度の低下がみられ、120℃で膨張が始まり 150℃で
シスチンが減少します。
湿熱では湿度 70%では 70℃から、97%では 55℃からケラチンの変性がみられま
す。洗髪したままのぬれた毛髪をドライヤーで乾かすと痛みやすくなるのはこのた
めです。
④ ブラッシングによる損傷
⑤ プールにおける毛髪の損傷
プールには殺菌作用として塩素が使用されています。塩素には酸化力があり、カ
ラー剤などに使われる過酸化水と同じ役割を持っています。酸化力は過酸化水素に
比べ弱いですが毛髪に損傷の影響を与えます。
泳いだ後は毛髪に残留塩素が残るためシャワーの水でよくすすぎをすることが大
切です。
⑥ 海水浴における毛髪の損傷
夏の海水浴、海岸での遊び、浜辺の散歩、サーフィンなどは、毛髪が海水でぬれ
たりします。ぬれた毛髪をそのままにしておくと乾くとざらざらとした感触になり
ます。これは海水に含まれた塩が毛髪の中にある水分を余計に吸収してしまうため
です。また、海水の pH がアルカリ性ですので、毛髪が海水にぬれると弱いアルカ
リ性に傾き紫外線や乾燥による影響を受けやすくなります。海水による毛髪の損傷
を避けるために乾燥する前にシャワーの水でよくすすぎをします。
(2)化学的要因
① カラーリング
② パーマ
極端な繰り返しは損傷(ダメージ)を与えます。
毛髪にはたんぱく質、メラニン色素、油分などがありますが生活スタイル、カラーリン
グ、パーマなどによって毛髪がダメージ(損傷)を受け、たんぱく質の変質やメラニン色
素の減少が起き、油分などが失われたりします。そのため毛髪のツヤがなくなる、染まら
ない、かからない、扱いづらい、枝毛、切れ毛、断毛などが起こります。
